小田原三の丸ホール 舞台照明設備

丸茂電機株式会社 山口翔平

小田原三の丸ホールは2021年7月に閉館した小田原市民会館の後継施設として、同年9月に開館した小田原市の新しい文化・芸術拠点です。1,105席の大ホール、平土間としても利用できる296席の小ホール、スタジオ、展示室やギャラリー回廊などの多彩な施設で市民の活動を支えています。

1.大ホール

■ 大ホール 舞台照明設備 概要


大ホール 舞台上部

演目ごとに吊り替えが多い幕中設備は、負荷側に2kW×3chの移動型調光器を設備した分散方式を採用しています。移動型調光器の電源に1φ3W電源ユニットボックスを設備しており、100V、200V回路の共用が可能です。これにより、使用する機材や回路構成などフレキシブルに対応することができます。一方、フロアコンセントや幕前の回路は、使い勝手を考慮し、従来の常設調光器盤を用いた調光回路で構成しています。

照明器具については、天井反射板ライト、ホリゾントライトにLED器具を、スポット系にはハロゲン器具を採用しています。歌舞伎や日本舞踊などの和物の上演も考慮し、ボーダーライトは影が出にくく舞台全体をフラットな明かりに染められる連続灯具のタイプとし、光源は位相調光に対応したLED電球を使用しています。


大ホール 客席


大ホール ライトブリッジに
取り付けられたボーダーライト

バルコニーライトは安全性と建築意匠に配慮し、器具がバルコニー先端の中に納まるように設計されています。スポットライト1台ごとに開口が設けられており、そこから舞台へ照射する構造です。仕込み時は2階席から上蓋を開けて調整します。


大ホール バルコニーライト


大ホール バルコニーライト部分 断面図

フロントサイドライトの上段パイプ(1段)は可変し、迫り出す機構を採用しています。これにより音響反射板を使ったコンサート仕様では客席からの視界を犠牲にすることなく、幕仕様で間口を絞った場合でも舞台に最適な明かりを照射することができます。


大ホール フロントサイドライト


大ホール 第2シーリングライト

今後の多チャンネル化への対応として、イーサネットを幹線としたネットワークシステムを構築しました。

調整室、すのこ、ギャラリー、客席上部の上手・下手にイーサネット制御ラックを設置し、そこから最寄りの負荷設備へLAN、もしくはDMXに変換して配線しています。


大ホール 調光室

■大ホール 電源設備・調光装置

■大ホール 負荷設備


大ホール 断面図 PDFデータで表示

2.小ホール

■小ホール 舞台照明設備概要


小ホール 舞台上部

仕込み時の機動性や将来的なLED化促進を見据え、小ホールの調光回路はすべて移動型調光器による回路構成としています。フロアコンセントの調光回路については、床面の設置スペースも限られているため、調光盤室に専用の移動型調光器ラックを設け、そこで負荷回路とパッチ接続し、送電するシステムを構築しています。

舞台上部にはスリットが設けられ、音響反射板設置時には天井内に吊り物が収納できるようになっています。その際の天井反射板用ダウンライトとしてスリット脇にLEDバーライトを設備しました。さらに、ホリゾントライトや客電、ピンスポットライトにもLEDを採用し、ホール全体の省エネ化を図っています。


小ホール 客席


小ホール 平土間状態


小ホール LEDフォロースポットライト


小ホール 第3ギャラリーライト

■小ホール 電源設備・調光装置


小ホール 調光主幹・分岐盤/移動型調光器

■小ホール 負荷設備


小ホール 断面図 PDFデータで表示