小田原三の丸ホールの舞台機構設備

三精テクノロジーズ株式会社 舞台機構事業本部 設計部 粟生啓介

1.機構概要


大ホール 平面図


小ホール 平面図

2.大ホールの特徴

(1)音響反射板

大ホールの音響反射板は、昇降式の天井反射板、正面反射板、側面反射板から構成されており、仕上げ、フレームを含めて総重量は約58tになります。客席側壁から舞台反射板までひと続きとなった音響庇は音響効果だけでなく、視覚的なホールの一体感を生み出すことにも寄与しています。また、大編成セット状態から側面反射板後方大扉を折り畳み、正面反射板の停止位置を変更することにより、中編成への移行が可能なため、オーケストラの規模に合わせた空間を用意することができます。

正面反射板に吊トラスフレーム構造を採用することで前方のバトン配置に悪影響を与えることなく、大編成から中編成へ移行させることが可能です。


大編成


中編成

(2)ギャラリー、スノコ

多様な演出要求に対応できるよう、道具用バトンには0~90m/minまでの変速が可能かつ、静音性の高いマシンを採用しています。

2基のライトブリッジはフレーム内に手動ウィンチを備えており、一文字幕のセット高さを調整することにより、灯具の見切れを抑えることが可能です。

大ホールは舞台上部の上手・下手の壁が斜めに立ち上がっていたことが、機器配置を決定する上で頭を悩ませました。舞台袖はマシンギャラリから立ち上げた吊物装置の斜めのワイヤと格納時の側面反射板との取り合いが厳しく、側面反射板の格納位置を下げるとライトブリッジの渡り橋との取り合いが発生するため、ワイヤの取り回しと側面反射板の格納高さの設定に非常に苦労しました。加えて、スノコ上では元滑車と各反射板枝滑車との取り合いが発生したため、すべての干渉を回避すべく、パズルのようなスノコ機器配置を検討することに時間を要しました。


大ホール 正面図

(3)床機構

3分割の手動走行式客席ワゴンを備えており、客席・オーケストラピット・前舞台としての使用が可能です。オーケストラ迫りには低ピット深さ、高ストロークに適したスパイラリフトを採用しました。

3.小ホールの特徴

固定の正面反射板(建築工事)と手動旋回式の側面反射板、電動変角開閉式の天井反射板で構成されています。3面の天井反射板は1台のマシンで開閉することができます。

開閉レールは幕溜まりが側面反射板の旋回に悪影響を与えないよう、舞台袖で前後方向に幕を引き込むため、R形状を採用しました。

4.制御システム・操作卓

操作卓は設置場所を限定しない移動式を採用。操作者制限モードを有し、操作者のレベルに応じて運転機能の制限が可能です。操作釦は単独×1軸、グル-プ×5軸、専用×2軸と床機構操作部で構成しています。各種設定・選択等は操作性向上と冗長化の為に2台搭載しているタッチパネル画面にて行います。レベル設定運転、グループ運転の他、ページ運転機能も備えています。

5.まとめ

最後となりましたがこの場をお借りしまして、施工に携わられたすべての皆さまに心より感謝申し上げます。