各分野の関係者らと研究会や、実験会を
技術委員会音響部会長 八幡泰彦

◎電源波形問題を重要テーマに
 音響部会では、協会の設立以来、本間明氏を部会長として、舞台音響にかかわる諸問題を狭い領域の課題としてとらえるのではなく、舞台技術あるいは舞台芸術という広い視野でとらえた調査や研究活動を行ってきました。この間に行った重要な活動には、「フライングスピーカーに関する検討」「劇場演出用機器設計基準に関する調査研究」「バックヤードモニターに関する検討」「劇場電気音響最終調整及び測定用CDに関する調査研究」などがあり、必要に応じて、セミナーを開催してきました。
 前部会長から引き継いだ課題は、劇場などの「音響」から高調波が発生し、受電装置に障害を惹起させることの対策でした。この間題は基準を設け、業者間に徹底してもらうことで決着しましたが、電源について考えることは良質の音響を提供するには不可欠のことであると結論しました。その結果、日本PA技術者協議会と連携し、電源波形の及ぼす影響について研究会を持ちました。これは全国6カ所を回るシンポジウムとなり、好評を得ました。
 電源波形の問題は電源インピーダンスを考えること、配線材料に対する配慮や安全対策にまで研究課題を広げることになりました。一方設備学会、技術部会からの要請があり、劇場設備としての音響電源の基準づく りに協力し、既に図書に組み入れられています。この電源に対する研究は引き続き音響部会のテーマとし
て、仮設や持ち込みによる音響作業の電源に対する技術基準の策定を進めています。雑音や安全対策として重要なアースについても議論が交わされ、アースの取り方について一つの指針が示されることになるでしょう。
 仮設や持ち込みのための電源の取り方、配分の仕方については電源ラックの試作を通して提案することになり、現在舞台音響家協会のメンバーの協力のもとにワーキンググループが組織され、作業が進められています。可搬式ラックを好意的に提供して戴いた結果、この試作に弾みがつきました。

◎劇場空間の音響チェック用CD
 また前期より引き継いだものとして測定、デモンストレーション用のCDがあります。劇場空間を音響的にチェックできるようにと企画されたもので、類似のものはなく使用した方面からは高く評価されたものですが、まだ幸いに在庫分がありますので、折に触れて紹介に務めています。先日もサンシャイン劇場で行われたプロフェッショナルオーディオ総合機器展のワークショップで紹介することで引き合いがありましたが、さらに広めていきたいと考えております。
 電源問題は適応コネクターの選定やラック製作に相当の時間と労力が必要とされていますが、一方で音響部会本来の課題にも取りかからなければなりません。

◎今後の課題と方針
 音響部会の課題は劇場空間に対する良質の音響の提供にあります。この「良質の音響」の意味するところは大変深く、コンサートホールと大いに異なる点としては視覚優先であることが挙げられます。これは無論劇場の本来の目的がそこにあるわけで、音を聞かせるという本源的なところに問題を求めるのは意味がないので、現時点からいかに離陸するかを論ずるべきであると考えます。
 劇場の音響は音響効果とPA(SR)がありますが、この両者の技術の進むべき方向について、演劇、オペラ、オペレッタ、
ミュージカル等の各分野の関係者や鑑賞者も交えて、先ず話し合う会を持ちたいと考えています。そしてシンポジウムまたは研究会を経て、実験会を重ね、ある結論に至りたいと計画しています。具体的には実験会には相応の劇場、メンバーには斯界のトップに参加をお願いしたいと準備を始めました。ここで得られるデータは今後のホールのソニューアルや建設の際の資料として役立つものとなれば考えています。
 JATETの音響部会に身を置くことによって少し視界が開けたように思えますが、息切れしないように自戒しています。